資料のふきだまり:その2

資料のふきだまり:その1の続き。
「タレント知事たちの道路建設促進合戦」横田一 『世界』2009.8

新名神予定地で不動産業者が住宅販売
 黒田府議と西村たけし市議(共産党)の案内で、新名神の建設予定地(凍結区間)の現場も確認した。新大阪駅から地下鉄や私鉄を乗り継ぐと、四〇分強ほどで大阪府枚方市に着く。大阪市京都市の中間に位置し、高層マンションや低層住宅が密集しているベッドタウンだ。
 淀川の川岸が、橋下知事のコスト意識のなさを実感できる絶好の見学ポイントであった。ここで車を止めた西村議員は「猪瀬副知事も民営化推進委員会の委員の時、視察に来られました」と言いながら、すぐ目の前のマンションを指差した。
 「ここに新名神が通ることになっており、あのマンションも取り壊すことになります。建設予定地一帯は、新築マンションや一戸建て住宅の建設ラッシュが続いています。凍結区間解除をして建設するとなれば、莫大な立退き料がかかるのは確実なのですが―」。
 市内を回るうちに、建設予定地内に立っている「一戸建て住宅分譲中」との看板も目にした。別の日にモデルハウスのある住宅販売場を訪ね、「ここも道路予定地ではないのですか」と聞くと、家族連れを案内していた不動産業者から驚くべき発言が返ってきた。
 「我々は大阪府から開発許可を得て販売している。もし道路建設となった場合は、この一帯は撤去・立退きとなりますが、高速道路を建設する民営化会社が補償してくれるので問題はない。一戸建てを買った人が損をすることはありません」。
 用地買収費の増加を放置しながら新名神建設を訴える−このことに橋下知事は違和感を抱かないのだろうか。それとも、「民営化会社の借金で新名神を建設するので、用地買収費が膨大な額になろうが、大阪府の懐は痛まない。まず不動産業者が分譲で儲けて、続いて建設業者も道路建設で一儲けでき、関西経済にはプラス」と割り切っているのだろうか。
 先の日経BPの記事で猪瀬副知事は、橋下知事を旧態依然とした利益誘導型の政治家と重ね合わせていた。
 「第二名神高速道路は民間会社(西日本高速道路株式会社)の事業なので、直轄負担金は発生しない。高速道路の利用者からの料金収入で、建設費をまかなっていくことになる。
 (橋下知事大阪府は)高速道路には直轄負担金が発生しないから、第二名神をつくってくれと言っているのだとしたら、あまりにも安易である。そういう安易な発想で、これまでも腕力の強い有力政治家の地元に高速道路がたくさんつくられてきた」。
 国の直轄負担金の廃止を訴える橋下知事だが、同時に、利益誘導志向も合わせ持っているということだ。ただし猪瀬副知事は新名神に関しては的確な主張をしているが、東京外環道の整備については石原知事に問題点を進言することはしていない。これでは「身内に甘く、他人に厳しい」と批判されても仕方がないだろう。先の民主党衆院議員はこう話す。
 「新名神は、第二京阪が開通して京滋バイパスとつながった時の交通需要を見るまでは凍結は解除しないことになっています。同じ理屈が外環道でも成り立ちます。東京周辺では、外環道をはじめ三つの環状道路を整備する計画になっていますがすべて必要だとは思えません。とりあえず、圏央道が完成した時の交通需要の推移を見てから、外環道整備の必要性を判断しても遅くはないでしょう」。