鳥越信氏コメント(抄)

9月11日 朝日新聞夕刊に掲載された、鳥越信氏のコメントから。
 
拝啓、大阪府殿。「児童文学館」廃止にモノ申す(朝日 夕刊 2008/9/11)(抄)


(前略)
 たまたま当初から現在も児童文学館の理事・運営委員をつとめている私は、「維新」案以前の「プロジェクトチーム」案からずっと府の説明を受けてきたわけだが、一九八四年の開設以降、国際的にも高い評価を受けてきた、この子どもの文化の情報・資料センターをつぶす最大・唯一の理由は、大阪府がかかえる未曾有の財政危機である。
 私自身も府民の一人で、税金を払っている立場だから、その危機は承知しているが、ただその危機を作った、例えば関西空港関連の莫大な支出など、削るべき無駄遣いも多かったのでは、との思いも消えない。
 現在、国際児童文学館の年間経費は約二億円である。その二億円も削らねばならぬほどの財政危機というわけだが、同館の廃止・移転にともなって、約五億円の予算が見込まれていることは意外と世間に知られていない。
 もっとも府の説明は、この五億円は一時的な出費で、そのあとはゼロになるのだから、財政的貢献は大とのことだが、資料の維持・管理費やそれに伴う人件費などを考えると、本当にゼロになるのだろうか。
 それよりも私が納得できないのは、「廃止・移転」以外の選択肢が全く検討されていない点である。例えば、橋下知事が直接文部科学省なり文化庁なりを訪ねて、年間二億円の国費を出してもらう、というような発想がなぜ生まれてこないのだろう。
 国がだめであっても、無料で寄贈するとしたら、自治体や企業や大学、あるいはひょっとして物好きな篤志家が手を挙げてくれるかもしれないのだから、全国に、または世界に公募をかけてみるという手はないのか。うまくいけば五億円の経費がゼロになるのだから、これ以上の財政的貢献はないだろう。
 それでもだめなら、古書店に売るという選択肢もある。そんなむちゃな、と思われるかもしれないが、半世紀以上古書界とつきあってきた私にいわせると、古書の流れに乗せた資料は、それを最も必要とする人の手に渡る、という法則性があるのである。しかも、おそらく二十億円以上で売れるだろう。
 もちろん、コレクションとしての価値はなくなる可能性もあるわけだから、そうなれば最後の選択肢として、寄贈を受けた資料は、すべて寄贈者に返すべきではないだろうか。
 私も寄贈者の一人なので、当然返してほしいと思うが、私以外のおびただしい人たちも、児童文学館だから寄贈したのであって、図書館だったら誰も寄贈しなかったはずである。もちろん私は、もし戻ってきたらすぐにまた、然るべきところに寄付するつもりだ。
 とにかく、はじめに廃止ありきではなく、存続を前提に、お互い知恵を出していきたい。
基本的に「廃止有りき」という姿勢には疑問を呈されている。あらゆる「間がない」というのは本当である。
 

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