沖縄の基地移設の対象となっている地域の豊かな自然と、基地がそこに与える影響について簡潔にまとめられた文の紹介&亀を喰う海兵隊員について

本永貴子「東村高江区を取り囲むヘリパッド移設問題と名護市辺野古新基地建設問題」(『未来』2007 7月 未来社)より。

豊かなやんばるの森
 沖縄島北部には、標高四〇〇mほどの山々が連なっています。その昔、地球がまだ氷河期を迎えていた頃、沖縄島をはじめとする琉球諸島は大陸と陸続きになっていて、一五〇〇m級の山々が連なる山脈がありました。しかし氷河期が終わり海水面が上がっていくとその頂上部分に珊瑚礁が張り付き、次第に小さな島々の連なる琉球諸島が形成されていったのです。ですから、亜熱帯の森:やんばる(山原:沖縄の方言で北部の山々のある地域をさす)には、熱帯の植物だけでなく高山植物の亜種が数多く存在しています。学者の間では調査に入るたびに新種を発見するといわれるほどです。また動物もやんばるの森にしか生息していないものが多く棲んでいます。ノグチゲラヤンバルクイナリュウキュウヤマガメなどの天然記念物、最近では一九九六年にヤンバルホオヒゲコウモリ・リュウキュウテングコウモリが発見されました。
 このように、独自の生態系を持つやんばるの森には、わかっているだけでも四〇〇〇種類以上動植物が棲み、豊かな生態系を保っています。日本の動植物の四分の一以上が生息するといわれ、その豊かさはダーウィンで有名なガラパゴス諸島を越えるほどです。
 地球的な規模で見ると、やんばるの森と同じ緯度には砂漠地帯などの乾燥地帯が多く見られ、湿度を保った亜熱帯の森はほとんどありません。この森が世界自然遺産の候補地に三度も名前を上げられたのもうなづけます。
 しかし、やんばるの森には世界自然遺産に登録できない決定的な問題があります。それが北部訓練場なのです。
 
世界唯一のジャングル戦闘訓練センター
 北部訓練場は、一九五七年に北部海兵隊訓練場として接収されました。現在の大きさは約七九〇〇ha。約四八〇haの普天間基地、約一九九五haの嘉手納基地に比べてもその大きさがわかります。北部訓練場で行われている主な訓練は、ジャングル戦闘訓練とジャングル技術訓練、ヘリコプター訓練など。フィリピンなどでの基地の返還後は、米海兵隊の国外唯一のジャングル訓練場となっています。
 戦闘訓練ではゲリラ戦や捕虜の奪還訓練、技術訓練では食料を持たずに森のなかで自力での食料調達をして生き延びるサバイバル訓練などが行われます。「亀がおいしい」とは実際の兵士の弁。希少な動植物が捕食されているかもしれないのです。
 一九九八年に、米軍内での名称がジャングル戦闘訓練センターに変更になってからは、「一五〇人まで、二週間まで」から「七五〇人から千人まで、一ヶ月まで」と訓練の規模が大幅に拡大されています。返還予定地は四〇〇〇ha。残存する三九〇〇haの森にこんなにたくさんの兵士が入ってきたら、森は踏み荒らされてしまい、生態系は破壊されてしまうでしょう。
 ヘリコプター訓練では、戦争映画にもよく登場するAH−1コブラという戦闘ヘリコプターやCH−46・CH−53などの輸送ヘリなどが使用されます。日中の訓練でも、森の木立から突然犯人探しをするようにAH−1コブラが低空飛行でやってきたり、夜の十一時ごろまで輸送ヘリが無灯火訓練をしたりします。輸送ヘリの訓練は、横二m・高さ一m・幅六〇cmもあるような大きなコンクリートの塊や兵士を吊り下げる訓練を行ないます。無灯火での訓練では、民家の灯りを頼りに飛ぶので、直接民家上空を飛ぶことになります。家の中でコップの水が震えるような騒音を伴います。
(強調引用者)

参考
辺野古がたいへんなことに! - 善哉新報(休刊中)