教育基本条例にある謎の「外部有識者」

ハシズム集会の第二回目中島岳志雨宮処凛寺脇研)で寺脇氏がさらっと触れていた校長の任命と教科書の選定へのかかわりが気になっていた(1:08:35くらいから)。組織マネジメント能力を買われて採用された校長が、教科書を推薦する権限を持つというのは確かに奇妙である。その校長を採用する面接は、教育委員ではなく、外部の有識者が行うという。そうすると、この条例の問題として、「府立高校支援学校校長の政治任用」の危惧が払拭できない、という点が浮かび上がる。
大阪府教育基本条例案 (平成23年9月21日大阪府議会提出後に、一部修正されたもの)

第4章 校長及び副校長の人事
(任用)
第14条 府教育委員会は、校長及び副校長を任用するときは、一般職の任期付職員の採用等に関する条例(平成14年大阪府条例第86 号)又は職員の任用に関する規則(昭和29年大阪府人事会規則第1号)に定める選考により任期又は在職期間を定めて行う。ただし、再任を妨げない。
2 府教育委員会は、前項の任用に当たり、年齢、職歴、教員としての在職期間等を問わず、マネジメント能力(組織を通じて運営方針を有効に実施させる能力)の高さを基準として、教員を含む意欲ある多様な人材を積極的に登用しなければならない。
教育委員会は、校長の任用に当たっては、外部有識者による面接を実施し、その結果を尊重しなければならない。
4 府教育委員会は、副校長の任用に当たっては、外部有識者による面接の結果に加えて、校長の意見も尊重しなければならない。
前2項に定める外部有識者の採用に際しては、産業界、法曹界、労働界、教育界など広く人材を求めなければならない。
この件について橋下徹前知事はTwitterでこのように説明している。
また競争原理の導入のところですが、今回の条例案の一番の肝は、現行の教育委員会制度に如何に世間の風を吹き込むかなんです。組織のポイントは人事権。今は教育委員会事務局が独占しています。形の上では教育委員が人事権を持っていることになっていますが、それは形骸化しています。
posted at 08:53:07
 
教育現場のルール制定権もこれまでは教育委員会事務局の独占。そのことの積み重ねでいつの間にか、教育現場の感覚と世間の感覚に許容範囲を超えたずれが生じたのではないかというのが僕の問題意識です。ゆえに、校長採用の時には外部有識者による面接を導入する。
posted at 08:55:07
本日朝日新聞夕刊、窓。校長公募の公募とは、民間人採用という意味ではない。全くの誤解。民間人でも教員でもどちらでも良い。公募の意味は、年功序列の校長人事を排すること、そして校長採用面接に外部有識者による採用面接を入れること。教育委員会の校長人事権を変更することがその目的。
posted at 22:37:55
 
公募=民間人ということではない。やりたい者が手を挙げる、若手教員でも能力があれば校長になれる、そういう校長人事を目指すのが公募の意味。窓では教員校長を原則にすべきだと締めていたが、教育委員会人事によって年功序列で教員が校長になることまで肯定するのか。朝日の論説委員は思考が浅い。
posted at 22:41:00
 
教員が校長になることを原則にすることは同意。ただし年功序列ではなく、やる気があって自ら手を挙げ、外部識者による面接を通った教員を校長にさせるべき。それが校長公募の趣旨だ。それとは別に、本日、首相官邸地域主権戦略会議があった。野田首相の政治的大号令で国出先機関移譲が前に進み始めた
posted at 22:43:26
地教行法では、
(任命)
第4条 委員は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で、人格が高潔で、教育、学術及び文化(以下単に「教育」という。)に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する。
とされる。
また地教行法では、条例で教育委員の増員も認められている(13条)。教育に造詣の深い産業界・法曹界・労働界の人物を教育委員に任命することはできる。公募にしろ年功序列の排除にしろ、なぜ外部有識者が面接しなければならないのか根拠が薄弱である。
また、その外部有識者を誰がどのように選考・任命するのか、不明である。たとえばここに知事が推薦した人物を任命できれば、知事の教育への関与度は格段に高まる。外部有識者の選定に議会等のチェックがきちんと関与できる制度になるのか、場合によっては首長交代ごとに校長をほぼ総入れ替えすることにもなりかねないのではないか。
橋下氏はツイートで公務員である「教育委員会事務局」を問題視してこれをバッシングしているが、教育基本条例においても、外部有識者の選定と面接にも透明性が確保できるか、まったく保障できないと思われる。